株主総会とは、株式会社の最高意思決定機関です。
重要な意思決定が株主と経営者によって議論されるとともに、
事業の状況についての報告を経営者から受け、場合によって質疑応答が行われます。
株主総会では「株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる」と規定されており、大きな権限を持っています。
企業一定割合以上の議決権を持った株主の参加により株主総会は有効となり、そのうち一定割合以上の賛成があった場合に可決されます。
@定時株主総会
定時株主総会は、年に一度、期末から3ヵ月以内に開催されます。
通常は、計算書類などの承認に加えて、取締役や監査役の選任、配当の決定などを決議するものです。
A臨時株主総会
臨時株主総会は、定時株主総会以外に開催される株主総会です。
臨時株主総会の議案は多岐にわたりますが、合併や買収、新株の発行など
重要な意思決定が必要な場合に開催されます。
株主総会の決議は、その内容に応じて、普通決議、特別決議、特殊決議の3種類存在します。
@普通決議
普通決議は最も一般的な決議方法であり、全議決権の2分の1超を有する株主が株主総会に参加し、
その参加者が持つ議決権のうち2分の1超の賛成を得ると可決となります。
企業を買収する際など、全株式の50.1%や51%を取得することがよく見られるのは、
自社のみで株主総会の普通決議を可決させて意思決定が可能になるためです。
A特別決議
特別決議は、特に重要な議案についての決議であり、議決権の2分の1超を有する株主が株主総会に参加し、
その参加者が持つ議決権の3分の2以上の賛成を得ると可決となります。
具体的には以下のような議案が対象となります。
●特定株主からの自己株式の取得
●資本金の額の減少
●定款の変更
●解散
B特殊決議
特殊決議は、株式の譲渡制限を設ける定款変更を行うような特殊な状況下における決議です。
総株主数の半分以上かつ、総議決権の3分の2以上の賛成が必要です。
可決のための母数が「出席株主」ではなく、「総株主」になっている点が異なります。
また、株主ごとに異なる取り扱いを行う旨(属人的株式の導入)を定款で定める場合は、
総株主数の半分以上かつ、総議決権の4分の3以上の賛成が必要です。
株主総会と取締役会は、参加する者と決定すべき事項が異なります。
取締役会は、取締役および監査役と、必要と認められた者のみが参加するものです。
影響の大きい契約や株主総会への議案の決定などの重要な意思決定がされる場であり、
役職員以外の者は基本的には参加できません。
取締役会で決定できるのは、会社経営の執行に関する以下の事項です。
●取締役会設置会社の業務執行の決定
●重要な財産の処分および譲り受け
●取締役の職務の執行の監督
●多額の借財
●代表取締役の選定および解職
●支配人その他の重要な使用人の選任および解任
2022年9月1日より、株主総会資料の電子提供制度が施行されます。
【電子提供制度の概要】
出典:法務省パンフレット『会社法改正資料-2』
電子提供制度の主なポイントは、以下の6点です。
1.上場会社においては、電子提供制度の利用が強制
2.電子提供措置は、原則として株主総会の日の3週間前まで
3.アクセス通知(招集通知)の発出は、株主総会の日の2週間前まで
4.株主は、基準日までに書面交付請求をすることで、書面の交付を受けることも可能
5.3月・6月総会の上場会社においては、施行前の2022年開催の定時株主総会で電子提供制度の導入に備えた定款変更が必要
6.上場会社以外でも導入可能
また、電子提供制度に関するQ&Aは以下のとおりです。
Q1:電子提供制度の利用が強制される上場会社も、定款変更手続を経る必要がありますか?
A1:上場会社については、施行日付けで電子提供措置をとる旨の定款変更の決議をしたもの、とみなす旨の経過措置が設けられています。
Q2:どこのウェブサイトに掲載すれば良いでしょうか。
A2:掲載するウェブサイトに特段の制限はありません。
実務上は、自社ホームページのほか、東証ホームページの株主総会資料の公衆縦覧用サイトのアドレスを参照先として指定するのが、一般的な運用となる可能性が高いです。
Q3:電子提供措置事項に関する動画をアップロードする方法でも良いでしょうか。
A3:電子提供措置は電磁的方法によることが必要ですが、ダウンロードしたファイルを印刷できるものでないと電磁的方法には該当しないとされています。
したがって、動画をアップロードしただけでは電子提供措置をとっているとはいえません。
Q4:議決権行使書面についても電子提供措置をとらなければならないのですか。
A4:招集通知に際し、株主に対して議決権行使書面を交付する場合は、例外的に、議決権行使書面の電子提供措置は不要とされています。
実務上は、議決権行使書面については従前通り書面で送付する会社が多いものと思われます。
Q5:上場会社が株主に送付する書面はアクセス通知のみということでしょうか。
A5:実務上、上場会社が株主に対して送付する書面としては、以下が考えられます。
@アクセス通知
A議決権行使書面
B電子提供措置事項を記載した書面
C書面交付の終了に係る通知および異議催告の書面
Dその他考えられる書面
アクセス通知に記載される事項は限定的なので、従前同様、株主に対して株主総会参考書類等を書面でも送付する会社もあるのではないかと思います。
議案に関する説明や事業報告の内容の一部をわかりやすく整理した資料を別途作成して同封する会社もあると思います。
Q6:上場会社が検討しておくべき定款変更は何でしょうか。
A6:以下の3つの定款変更手続が考えられます。
@ウェブ開示を認める定款の定めを削除するための定款変更
⇒電子提供制度が導入された以上は、ウェブ開示によるみなし提供を行う必要性が乏しいことから、
ウェブ開示を認める定款の定めを削除する定款変更を行うことが考えられます。
A電子提供措置をとる旨の定款変更
⇒上場会社については電子提供措置をとる旨の定款変更の決議をしたものとみなす旨の経過措置が適用されますが、
備置定款を実態にそろえるべく、電子提供措置をとる旨の定款変更を施行前に行う会社が多いと思われます。
B書面交付請求をした株主に交付する書面に記載すべき事項を一部省略する為の定款変更
⇒定款変更会社の負担軽減のためにも、書面交付請求をした株主に交付する書面に記載すべき事項を一部省略するための定款変更をしておこう、と考える会社が多いと思われます。